年金への大衆課税の放棄か?
〔 H23.4.15 〕
税法にはない申告不要制度
年金者が扶養親族等申告書を提出した場合は、他に公的年金や所得があるとかでなければ、所得税の確定申告は不要である、という趣旨のことを日本年金機構のホームページでは言っています。
給与所得の場合の年末調整というような年税額確定の手続きもないまま、確定申告が不要だというのです。
今年の税制改正案
国会に上程されている今年の税制改正法案をみると、『公的年金等の収入が400万円以下で、これ以外の所得が20万円以下の者については、確定申告を不要とする』制度が創設されることになっています。
国民年金、厚生年金、公務員共済年金の平均年収がそれぞれおよそ70万円、203万円、275万円ということからして、大部分の年金生活者は申告不要になりそうです。
国税庁が日本年金機構の言い分を追認しようとしているかのようです。
扶養〇〇等申告書のチェック権限
年金受給者が提出する扶養親族等申告書の記載内容が正しいか否かを年金支払機関はチェックしません。給与所得者の扶養控除等申告書についても同じです。提出されたものを正しいものとして信じて源泉徴収等の事務処理をするだけです。不正記載への罰則もありません。税務署長でさえチェックして更正する権限は限定的なのです。
給与の場合の実質的な担保
それでも、給与の場合の扶養控除等申告書は、日常的に共同体的な接触をしている関係の中で提出する書類であり、さらに年末調整というきめ細かなチェックと計算をする手続きがあり、さらに住民税サイドでのチェックを通じて、相当な確率で年税額確定の正確さが担保されています。
多数者を相手にすることに疲れた国税庁
それに引き換え、年金支払機関は個人的には無縁な組織であり、それも複数の場合が多くあり、それらの機関には扶養親族等申告書の記載内容の異動やミスを正す義務もなく、正確に年税額を再計算する事務手続きも課せられていないので、所得税の申告不要を導入する条件は全くない、と言えます。
国税庁は、多数の年金受給者への課税事務に疲れて、これへの適正課税を放棄しようとしているかのようです。
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