強制権の発動としての任意調査
〔 H22.12.22 〕
税務調査の法的根拠である質問検査権
各税法に「必要があるときは・・・質問し・・・検査することができる」と明記されています。税務署に調査権限があるのはこの「質問検査権」の規定に拠っています。
さらに、納税者が税務署員の質問に対して答弁拒否したり、税務署員の帳簿検査について閲覧拒否や妨害をした時は、「1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する」ということにもなっています。
任意の税務調査の本質
税務調査は犯罪捜査では有りません。しかし、罰則を背景とした受忍義務・協力義務が課せられていますので、本質的には強制調査なのです。
犯罪調査ではないにも拘わらず、納税者に一定の制限を課す強制調査が許されるのはそこに公益性が認められるからです。
公益とは、申告内容に法律違反がある場合に税務署長の権限でそれを是正するということです。
任意調査とは言うけれど
一般の税務調査は任意調査と言われていますが、何が任意なのでしょうか。
犯罪捜査ではないので、物や書類の押収とか身体の拘束などは許されません。納税者の管理下にあるものに関しては、納税者が自主的に開示するものを確認するだけしかできません。
不開示には罰則が適用されますが、罰を受けてもかまいません、と言うときにまで開示の強制はできないのです。
即ち、任意の意味は、あくまで納税者の自主的協力を前提としている、ということにあり、従って、調査の日程や場所や方法に関して納税者の都合は優先的に配慮される必要がある、というところにあります。
「必要があるとき」とは?
これらのことから、税務調査権限は必要最低限の制度的要請でおこなわれるべきであり、当然にも公平待遇の要請にも合致しているべきということになります。みだりな権限行使は抑制されるべきで、当然、その調査が納税者に受忍義務を課すほどの公益性を有しているのかは検討されるべきであり、またその結論は開示されるべきです。
最高裁も「客観的な必要性があると判断される場合」に税務調査は許されるとしていますので、税務調査に際しては、この「客観的な必要性」の検討結果を確認してから受忍意思を言うべきなのかもしれません。
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