扶養親族の綱引きと機会の不平等
〔 H22.2.3 〕
先着順が大原則
別居や離婚後、養育費その他の費用を負担している父と、日常の起居を共にしている母とがいる場合、どちらの扶養親族とするかは、二重の控除は認められないので、「扶養控除等申告書」などの扶養親族とする届出をどちらが先に提出したかによるものとしています。
先着順とすることの不公平
しかし、夫婦の一方が、別居や離婚後、就職して新たに働き始めるというような場合に、そもそも先着順を争う前提的条件がないわけですから、子の帰属をめぐる争いがある場合には税法は中立の立場になく、不公平と言わざるをえません。
扶養親族というなら本来はどちらが主要な扶養者かで決すべきところなのに、規定は、先着順を大原則とし、それが不明なときは、所得の大きい者の側に帰属するものとしています。先着順や所得の多寡は決して扶養の事実の直接的な証明になるものではありません。
別なルール適用者にも同じ判定基準では
扶養控除等申告書の提出の時間的先後を争えるのは給与所得者だけです。事業所得や不動産所得で収入を得ている人は確定申告書などの提出によってしか扶養親族に関わる届出をする機会がありません。
扶養親族に関わる届出の先後で扶養親族の帰属を決するとなると、そもそも機会の不平等を前提にしているので、給与所得者が常に先着者になってしまうことになります。なぜなら給与所得者の「扶養控除等申告書」は通常、その年の前年末に提出するのに対し、確定申告書はその年の翌年2月16日以後に提出するものだからです。
事例もあるのになぜに疑問視されない
審査事例に、別居中の夫は月額2万円を子の養育費として送金しているのみで、妻は子と起居を共にし、生活費も大部分を負担しているというケースで、妻が不動産所得に伴う確定申告において子を扶養親族として申告書を提出したところ、争う術もない先着順ルールで否認されたというものがあります。
アンフェアなルールを決めて、それで判定しても、結論はアンフェアなものにしかなりません。それに、この先着順ルールは法律ではなく政令規定なので、なおさら納得し難いところです。
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