米在住の外科医5億円申告漏れ
PE有無の判断 慎重に
〔 H22.1.21 〕
外国人(正しくは
「非居住者」
といいます)であっても日本で所得を得れば(この所得のことを
「国内源泉所得」
と言います)日本の所得税が課税されます。その課税方式は、その外国人が日本にPEを持って所得を得ているか否かで異なります。PEがあれば、源泉分離課税に加えて総合課税の確定申告義務を負い、PEがなければ、源泉分離課税で課税関係が終了します。これが、国内税法の原則的な定めです。
PEですが、permanent establishmentの略で 、通常、
「恒久的施設」
と呼ばれています。具体的には、
@支店PE
(工場、事務所、営業所等)、A
建設PE
(国内において行う建設、プラントの組み立て等の作業所)、B
代理人PE
(契約締結等の代理)に分けられています。
(1)国内税法に優先する租税条約の存在
この国内税法の定めに対して、一般的には、その外国人の居住地国と租税に関する2国間の取決め
(租税条約)
があり、日本で得た所得であっても、
日本にその外国人のPEがなければ、一定の所得については、日本では課税しない
とする条約優先の規定があります。
(2)世界的権威の外科医5億円申告漏れ
過日、新聞報道でも話題になった、米在住の世界的権威の脳神経外科医が日本の病院で手術をし、得た収入が3年間で5億数千万円であったが、日本では申告しておらず、国税当局は、所得税及び消費税の申告を求めた、という内容のものです。
これに対し、外科医は「顧問の会計士は、日米租税条約では、
日本にPEがなければ、外科医のような自由職業者の所得について、日本では課税しないことになっている
ので申告の必要はないと言われた」とコメントしています(詳細は不明)。
(3)問題の所在(PEの事実認定)
実際、外科医は日本に事業所、手術施設等のPEを有していませんので、条約の定めからすれば日本に課税権はありません。
しかし、問題になったのは次の点でした。国税局は実態を調査。外科医と患者や病院との連絡やスケジュール調整を都内の医療機器販売会社に担わせていたことから、
この会社を、外科医の代理人としてのPEと認定
。この認定によって、日本での課税権が生じたようです。これは、外科医にとっても想定外だったでしょう、過去にも個人が代理人PEを持つと認定されたことがないようで、PEの有無の判断に慎重にならざるを得ません。
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